台詞集

はるかに遠き 夢の形見は……




 神……、星間戦略兵器である
デウスは目醒め、その方舟である

 メルカバーは起動しました。

 デウスは、その部品となることを
運命られた、変異した人々を次々と
 吸収し、変異しなかった者……

いずれはその脅威となるであろう、
  我々とその文明を根絶する為、

   活動を開始しました。

地上はメルカバーと、
     そこから生み出された

『天使<アイオーン>』

と呼ばれる兵器群によって
   じゅうりんされたのです。


覚醒したデウスの後を追い、
その消息を絶ったままであった
フェイは……

元々メルカバーのあった場所から
ヴェルトールの機体ごと
発見されました……。

一時はフェイの帰還を喜んだ
我々でしたが、
 ……それも束の間の事でした。

フェイは……
原因不明の仮死状態となったまま
      ……発見されたのです。


フェイの意識は戻りませんでした。

フェイ……いえ、イドの力の再発を
 恐れたシェバトと我々は……
 やむなくフェイを……


『カーボナイト凍結』としたのです。


シタン
「……女王。
 シェバトの方々は、何故そこまで
 フェイを恐れるのです?▽
 グラーフとイドの力がいくら同質の
 ものだといっても……▽

ゼファー
「…………。
 彼が恐ろしいのではありません。▽

ゼファー
「私達自らが犯した過ちを恐れ、
 それに蓋をしようと
 しているのです……。▽

シタン
「あなた方が犯した過ち?▽

ゼファー
「500年前、私達シェバトは
 ソラリスから独立するための
 戦を起こしました。▽
 ですが、それは“権力欲”に
 取り付かれてのこと……。
 戦乱の最中、人々の意志が
 我々シェバトではなく、▽
 ニサンの聖母、ソフィアの下に
 集うことを恐れた、当時のシェバト
 長老会議は……
 ソラリスとある取引をしたのです。▽

シタン
「取引ですって?▽

ゼファー
「……はい。▽

ゼファー
「当時ソラリス、ガゼルの法院は
 その裏で実権を握る一人の女と
 反目しあっていました。▽

シタン
「……それは
 ミァンではないのですか?▽

ゼファー
「恐らくはそうでしょう。▽

ニサンに集う人々の力が
これ以上大きくなることを恐れた
ガゼルの法院は、反目していた
ミァンを私達に引き渡すよう工作
地上の分割統治を約束する。

その代わりに……

ニサンに集った反乱軍の人々と
その寄る辺となっていたソフィアを
差し出させました……。

ゼファー
「シェバト重鎮達はその申し出を受け
 そして……▽
 対ソラリスとの最終決戦の地が
 その場所に選ばれたのです。▽

ゼファー
「シェバトはその戦に加担は
 しませんでした……。▽
 ソラリスの大軍勢にはばまれた
 ニサン反乱軍の人々は、その退路を
 断たれ、成す術なく殺されて
 いったのです……。▽
 その中に、ラカンと、
 バルトの祖先であるロニ、
 私、そして……
 “カレルレン”がいたのです。▽

シタン
「貴女もそこに?▽

ゼファー
「……はい。
 四方を敵に囲まれ、
 私達は死を覚悟しました。▽
 その時、反乱軍の旗艦に
 乗艦していたソフィアは
 我々の退路を築く為、
 自らの身を犠牲にし……▽
 敵主力艦めがけて
 特攻をかけたのです。▽


ゼファー
「ソフィアの犠牲によって私達は
 生き長らえました。▽
 ですが、彼女の死は二人の男の
 運命を大きく変えて
 しまったのです……。▽

 ニサンの僧兵長として、彼女に
  付き従っていたカレルレンは、
呼んでも応えない神、信仰に絶望し


  『自らの手で神を創り出す』

 ……そう言い残して
  私達の前から姿を消しました。

そしてラカンは……

彼女の死を前にして、
何も出来なかった自分の力のなさを
悔やみ……


  ……『伝承の力』を求めました。

シタン
「伝承の力?▽

ゼファー
「神の眠る地『マハノン』……
 その知恵の源『ラジエル』……▽
 神の知恵によって
 創られた『アニマの器』……
 それ以外に……、
 もう一つの伝承があるのです。▽

シタン
「それは?▽

ゼファー
「『ゾハル』……。▽

シタン
「ゾハルですって!?
 それは、ミァンの言っていた、
 神……デウスや……▽
 我々の持つエーテル力の
 源といわれる動力炉、
 『事象変移機関』の
 名前と同じではないですか!▽

ゼファー
「それは……
 きっと同じものなのでしょう。▽
 運命られし者だけが見つけられる
 究極の、この世界の根元の力が
 存在する場所……。▽

ゼファー
「人というものに絶望したラカンは
 それを求めました……。▽
 そして……
 ラカンはグラーフとなり、
 世界は崩壊しました……。▽
 全ては当時の人の権力欲が
 引き起こした悲劇……。
 それを止められなかった私にも
 その責任の一端があるのです……。▽
 そのグラーフと同質の力を持つ
 フェイ……。
 我々は自らの悪業そのものを
 封印したかったのです……。▽


かつてグラーフ……ラカンという
男が求めた『ゾハルの力』……。

  グラーフと同質の力を持つ
  フェイ……。

私にはいつか、彼がその力を
求め、目醒めるのではないかという
予感がありました。

……そして、
それは現実のものとなったのです。


ここは……
どこだ?

俺は……
誰だ?

ここは……
俺の記憶?

先生……

バルト……

リコ……

ビリー……

ワイズマン……

グラーフ……

みんな……
俺の……記憶。

エリィ?

母さん?


お前は?


恐れ入った。
うまいこと
するじゃないか。


お前は……
イド?


少々見くびっていたよ。
模擬人格のお前に、
まさか四人目が作れるとはな。


四人目?


そいつは何も感じることはない。
自我の殻に閉じこもったんだ。

押し寄せる事実と
直視したくない真実。

それらを恐れたお前は
外界からの完全な隔絶を望んだ。

そして四人目の人格を形成した。
四人目のフェイ。
名前は……どうでもいい。

今、ステージに立っているのは
こいつだ。こいつが俺達の
体を掌握してる。

だが、それも無駄な抵抗だ。

こいよ。


待て、何をするんだ!


鍵はこいつが持っている
それを使わせてもらうだけさ。

俺には、
行かなければいけない
場所があるんだ。

お前も……来るかい?


ロニ
「まあ、食ってくれ。
 最近じゃこういったものは、
 手にはいらないだろ?▽

ロニ
「まぁ、これも、この俺の
 商才のなせる技かねぇ。▽

レネ
「……どうした? ラカン。
 何、気むずかしい顔をしてる?
 悩みごとでもあるのかい?▽

ラカン
「……いや、
 例のソフィアの肖像画の話さ。▽
 なぜ、肖像画を描くことを
 承知したのか
 わからないってね……。▽

レネ
「ソフィアって、お前の
 幼なじみだったっていう
 ニサンの聖母のことかい?▽

ラカン
「幼なじみなんていうほどの
 ものじゃない。▽
 ただ子供の頃、
 俺の自宅近くの修道院に
 療養に来てた時、顔見知りに
 なったってだけだよ。▽

ラカン
「体が弱かったんだ、彼女。▽

レネ
「……で、
 わからないってのは?▽

ラカン
「彼女は、教団の為とはいえ、
 自分自らが象徴になる
 ようなことは望まない人だ。▽
 ……事実、
 肖像画を描くことには
 乗り気ではなかったらしい。▽
 なのに、
 絵描き手が俺に決まったと
 聞いて承知したらしいんだ。
 それがわからなくてさ……。▽

ロニ
「そうか……。▽

ロニ
「……それはきっと
 君に気があるんだな。
 その御方は……。▽

ラカン
「な、何を言い出すんだよ。▽

ロニ
「そういうもんだよ、
 女心ってものは……。
 なぁ、カレル……?▽

ロニ
「おい、カレル。▽

カレルレン
「え?▽

レネ
「……なんだよ?
 食わないのか?
 もう、焼けてるぜ。▽

カレルレン
「あ、ああ……。▽

ロニ
「ニサンの聖母……
 男冥利に尽きるじゃないか?
 ええ、ラカン。▽

ラカン
「止してくれ……。
 そんなんじゃ……ない……。▽

ラカン
「な、なんだよ?▽

暗いな、君は……。


カレルレン
「心を落ちつけるには
 書物を読むのが一番だと、▽
 ソフィア様に勧められて
 始めたんだが、
 のめり込んでしまってね。▽

カレルレン
「今では結構物知りになったよ。
 自分でいうのもなんだがな。
 最近はこんなものを読んでいる。▽

ラカン
「なんだい?
 それは?▽

カレルレン
「メルキオール師からお借りした
 ものなんだ。▽
 分子工学……ナノテクノロジー。
 太古に滅んだゼボイムとよばれる
 文明の遺跡から発見された書物。▽
 だれかの研究リポートの
 複製らしくてね、完全ではない。
 もっと凄いことが書かれていた
 みたいなんだが……。▽


エリィ
「どうしたの?
 具合、悪そう。▽

エリィ
「ここのところ毎日ふさぎ
 込んでいるような気がする。
 何かあった?▽

ラカン
「自分でも解らない。
 だけどなぜだか筆が進まないんだ。
 ごめん、もう今日は……。▽

エリィ
「そう……。▽
 無理は良くないわ。
 暫く休んでみたらどうかしら。
 カレルレンに送らせ……▽


カレルレン
「これでも昔は相当悪どい事をやって
 過ごしていた時もあった。▽
 手当たり次第にかみついて……
 周りはみな私を恐れた。
 ……仲間ですらな。
 怯えた視線の中で生きていたよ。▽

カレルレン
「だが彼女だけは私を恐れなかった。
 彼女は笑った。
 安らぎ……。▽
 それを教え、与えてくれたのが
 彼女だった……。
 彼女は私に人としての生き方を
 教えてくれたんだ……。▽


カレルレン
「何をしている、ラカン?▽

ラカン
「カレルレンか……。
 絵を……肖像画を描くのを
 止めようかと……。▽

カレルレン
「なぜ……止める?▽

ラカン
「こんな状況だしね。
 もう絵を描いていられる
 場合じゃない。▽

ラカン
「いずれ彼女も戦線に
 立たねばならなくなる。
 だから……▽

カレルレン
「本当にそれだけか?▽

ラカン
「…………。▽

カレルレン
「ラカン……?▽

ラカン
「……俺は彼女の笑顔が辛い。▽
 彼女が微笑みかけて
 くれればくれる程、
 俺は……自分が小さな存在に
 思えてならない。▽
 心の中が“カラッポ”な存在。
 絵を描くこと以外、なんの取り柄も
 ない俺……。▽
 そんな俺にも分け隔てなく
 彼女は接してくれる。
 ますます俺は自分が小さなものに
 感じられる。▽

ラカン
「最初はこんな気持ちじゃなかった。
 一分、一秒でも長く絵を
 描いていたかった。▽
 いつまでもこの絵を
 描き続けていたかった。
 だけど、だめだ。▽
 絵が完成に近づくに連れて、
 俺の中の“カラッポ”な部分が筆に
 出てくるんだ。▽
 俺は彼女のありのままの姿を
 描かなきゃならないのに……。▽
 でも……この絵は……
 俺自身だ……。
 そこにカラッポの俺がいる。
 だから……止める。▽

カレルレン
「お前自身……?▽

カレルレン
「お前は逃げているだけだ!
 微笑むソフィア様のその眼差しに
 耐えられないんだ。▽
 肖像画を描くことによって、
 己の内面のくうそさと、彼女の内面の
 ゆたかさとの隙間に気づき、
 それが埋められなくなった。▽
 だから描くのをやめるんだ。
 お前は彼女を拒絶している!
 かといって離れる決心もつかない。▽
 なのになぜ彼女はお前に微笑む!?
 気持ちを受けとめられない、
 受けとめる気もないのに……▽

カレルレン
「なぜだ!
 私ならばそれを……
 その気持ちを……。▽


カレルレン
「あなたは自分を粗末にし過ぎる!
 どうしてもっと自分を
 大切にしないんだっ!▽


ロニ
「……これって、
 彼女の表情そのまんま?▽

ラカン
「ああ……。
 傍目には……ね……。▽

ロニ
「微笑みねぇ……
 そうかなぁ……。▽
 彼女が普段僕等に見せてくれる
 笑顔と、この絵の彼女の笑顔とは
 どこか違う気がするんだけどなぁ。▽
 たしかにラカンの心情って奴が
 入ってることは入ってるん
 だろうが、でも……▽
 人前でここまで自分の内面を
 吐露する様な表情<かお>
 したことないと思うよ、彼女。▽

ロニ
「こんな素晴らしい表情の
 ソフィアを描いていながら
 なぜ止めるなんていうんだ?▽

ラカン
「……素晴らしい?
 よしてくれよ。
 そんな絵……ちっとも……▽

ロニ
「ラカン、君は自分の事を
 カラッポだと言う。
 ならばなぜ僕等と行動を共にする?▽
 僕等のしてきたことは
 単なる人助けとは違う。
 自由を勝ち取る為の戦いだ。▽
 何度も命を失おうって
 危険にさらされてきた。▽

ロニ
「心になにもない人間に
 出来ることじゃない。
 ……違うかい?▽

ラカン
「買いかぶり過ぎだよ、
 ロニ。▽
 何かしていれば……
 体を動かしていれば、
 自分が虚ろだということを
 気にしないで済む。▽

ラカン
「もともと存在自体が虚ろなんだ。
 死んだってかまやしない……
 それだけさ……。▽

ロニ
「相変わらず暗いなぁ、
 ラカン……。
 それに嘘をついている。▽

ラカン
「…………。▽

ロニ
「単に君は自分の感情を表現するのが
 下手なだけだ。
 カラッポなんかじゃない。▽
 そのことを彼女は知っている。
 だから君だけに本当の微笑みを
 見せるんだよ。▽

ラカン
「俺には彼女の微笑みを
 受ける資格なんてない。▽
 彼女は人々の希望だ。
 支えなんだ。
 成さなければならないことが
 たくさんある。▽

ラカン
「一介の絵描きである
 俺一人の為に
 心を開いてくれる訳が……▽

レネ
「兄貴ーっ! 兄貴ーっ

レネ
「なんだよ兄貴、
 こんなところにいたのか。▽

ロニ
「どうした?▽

ゼファー
「シェバトの長老会議の
 決定が出ました。
 私達は明日ソイレントに出発です。▽

ロニ
「ソイレントだって!?
 あそこはソラリスに……▽

レネ
「そうだ。
 それと、ソフィアも
 同行することになった。▽

カレルレン
「馬鹿な!▽

カレルレン
「これだけ難民が増えていると
 いうのに、ソフィア様がニサンを
 離れることなど出来るわけがない!▽
 その上、ソイレントに行くなんて
 無茶だ!
 危険過ぎる!
 長老会議は何を考えているのだ!▽

ゼファー
「いえ、そうではありません。▽

ゼファー
「これはソフィア個人の意志なのです。
 彼女自ら進んで願い出た
 ことらしいのです。▽

カレルレン
「そんな……
 何をお考えになって
 おられるのだ。▽

レネ
「最初は俺達だけでって
 話らしかったんだが……▽

カレルレン
「私達だけ……?▽

ラカン
「…………。▽


カレルレン
「ソフィア様っ!▽

カレルレン
「ソフィア様……▽

カレルレン
「何をやっていたんだっ!
 ラカン!▽
 もういいっ!
 貴様にソフィア様は任せられん!
 彼女は私がこの命に代えてでも
 護ってみせる!▽


ロニ
「いい加減寝たらどうだ?
 カレル……。▽
 一昨日からずっとなんだろう?
 体がもたんぞ。▽

カレルレン
「大丈夫だ、この程度……▽

ロニ
「それ見ろ。
 ここは僕が看ているから
 行って寝てこいよ。▽
 ここでお前にまで倒れられちゃあ
 いざって時どうする?
 お前も大事な戦力の一人
 なんだってことを忘れるなよ。▽

カレルレン
「ああ……分かった。▽


ラカン
「すまない、エリィ。▽

ラカン
「俺は……。
 俺の判断のミスが君をこんな目に
 あわせてしまった。▽

ラカン
「俺は恐かった……。▽
 全てをみすかされているようで……
 君の瞳が……視線が。
 あれは君の瞳に映った
 俺自身だったんだ。▽
 俺はそんな自分を見るのが、
 描くのが嫌で……だから……
 君は一体、俺の中に何を
 見つけたんだ?▽

ラカン
「君が目醒めたら
 それを聞こうと……
 ……いや、やめとくよ。▽
 やはり俺なんかの為に
 君に迷惑はかけられない。
 それにきっと聞けっこない……。▽
 君の瞳を見れば何も
 話せなくなってしまうんだ。
 俺は、自分の気持ちも
 伝えられない……▽

ソフィア
「あなたは誰よりも優しいわ……。▽

ラカン
「エリィ……▽

エリィ
「あなたは自分の行為によって
 誰かが傷つく事が耐えられない人。▽
 だからいつも自分を押し殺して
 しまっている。
 自分が傷ついて済むなら
 それでいいって……▽

エリィ
「私は……、
 そんなあなたが好き。▽

ラカン
「止せ。 言ってはだめだ。
 今の君がただの人に
 なってしまったらみんなは……。▽

エリィ
「人は……
 そんなに弱くはないわ。
 形だけの象徴なんて必要ない。▽
 心の中に光を持っていれば、
 どんな苦難だってきっと
 乗り越えられる。
 私はそう信じている。▽
 私のしてきたことはただ、
 その光が誰の心の中にも
 存在するってことを
 教えてあげていただけ。▽

エリィ
「私だって一人の女だもの。
 その性を貫く為なら、今の立場、
 捨ててもいいって思っている。▽
 私はソフィアを演じているだけ。
 私は私。 昔から変わらない。
 臆病で、泣き虫で、身勝手で……
 それが私。▽

エリィ
「あなた、そうやって自分を
 偽って生きて幸せ……?
 私は……そんなのいや。▽

エリィ
「私はね、ラカン。
 もっと自分に素直に生きたいの。
 好きな人には好きって告げたい。▽
 断られて傷ついてもいい。
 たった一度の人生だもの、
 後になって振り返ることなんて
 したくない……。▽

ラカン
「俺は……、
   俺は……▽


カレルレン
「こんな所で終わってたまるか!
 俺達はあいつらの
 所有物じゃないっ!▽


カレルレン
「何をするつもりなんだ!?
 ソフィア!!

ソフィア
「……これで終わりにします。
 もうあなた達が
 戦う必要はありません……。▽
 だからカレルレン……。▽
 どうか、その拳を開いて……。
 開いたその掌で、これから
 生きていく人達を優しく
 包んであげて……。▽


ラカン
「馬鹿な真似は止めろ!
 君は俺達が必ず逃して見せる!
 だから……!

ソフィア
「ありがとう、ラカン……。
 でも……ごめんなさい……。
 今の私にはこうするしか……。▽

ラカン
「エリィ!


ソフィア
「人はお互いを補いあって
 生きていく……
 それは幸せなことだから……▽
 その幸せを分けあって……
 そして……
 生きて! ラカン!▽


ラカン
「エリィーーーーー!!


カレルレン
「私達は捨て石だったんだ……。
 奴等は自らの権威を守る為に
 ソフィアを……。▽
 これが……、こんなことが
 私達の目指していた
 理想の世界だったのか?▽
 私達のしてきたことは、
 いったいなんだったんだ?
 ソフィアの目指していた理想……
 救済の結末がこれか?▽

カレルレン
「これじゃあんまりだ……
 あんな奴等の為にソフィアは
 犠牲になって……▽

カレルレン
「ソフィアは信仰さえ持てば
 己が望むべく
 道が開けると言った。▽
 だが現実はどうだ?
 神は応えなかった……。
 私達に信仰心がなかった
 からなのか?▽
 たとえ私達に信仰がなかったと
 しても、ソフィアにはあったんだ。
 その彼女が何故犠牲に
 ならねばならない!?▽
 『神は死んだのか』……?
 いないのか……?
 そんなものは最初から存在
 しなかったというのか!?▽


ソフィア
「神への信仰……
 それは外に求めるものではなく、
 内に芽生えさせるものなのです……


カレルレン
「はははは……
 そういうことか……。
 ……いいだろう。▽
 この世界に神が存在しないの
 ならば……、私がこの手で
 創り出してやる!▽

ラカン
「カレルレン……。▽

カレルレン
「ソフィア……
 私を導いてくれ……。
 見せかけの愛など壊してやる……。▽

ロニ
「…………。
 僕達は生き残った同士を集める。▽
 個人で戦っていたのでは
 奴等は倒せない……。
 だからいつか奴等に対抗出来る
 国を作って、その時こそ……。▽

ロニ
「君はどうするんだ?
 ラカン……?▽

ラカン
「俺は……▽


ラカン
「……エリィ!?▽


ミァン
「……力さえあれば
 助けられたのにね。▽

ミァン
「欲しいんでしょ?
 何者にも屈しない力が。▽

ミァン
「成りたいんでしょ?
 絶対的な存在に……。▽


ラカン
「あそこに……
 俺の求めるものが……

違う!
俺が望むのはこんなことではない!
いや、これこそが……
俺自身が望んだことなのだ!

……生きて!


フェイのヤツが
捕まってるのは、ここか!?
ザマーミヤガレってんだ!▽

ダン
「それじゃオイラが、
 泣きっ面をおがんでやると
 するかな! へへッ。▽

ダン
「う……!
 こ、これは……!?▽

ダン
「………。
 ひ、ひどい……。▽

ダン
「い、いくらなんでも、
 ここまですること
 ないじゃんかよ……。▽
 生きてるんだろ、
 まだ……?
 どうして、こんなこと
 できるんだよ!?▽
 同じ人間なんだろ、
 チクショー……!▽

ダン
「………。
 フェイ……
 兄ちゃん……。▽

泣いてる……。▽

ダン
「えッ……!?▽

ダン
「な、なんだ……、
 ミドリか。
 ビックリさせるなよ。▽

ダン
「な、泣いてるって……、
 だれが、だよ。
 ……!?▽

ダン
「フェイ兄ちゃんが!?▽

ミドリ
「怒ってる……
 傷ついてる……。▽
 彼がもうじき、
 目をさますわ……。
 あいつが呼んでるもの……。▽

ダン
「なんだって!?▽

ダン
「わわっ……!!
 な、なんだ!?▽

……ぐッ!
あぐッ……!!

や……やめろ……
やめ……ろッ!!

ダン
「フェイ兄ちゃん!?▽

ダン……、
ミド……リ……!

に……、逃げろ……
はや……く……
はやくッ!!

ダン
「うわあッ……!?


 カーボナイト凍結を打ち破った

『イド』……フェイは、
ゾハルを求め、ヴェルトールと共に
飛び去りました。

 私達はフェイの後を追いました。

  そして……、太古の昔、
  ゾハルが落着した場所へと
  たどり着いたのです……。

そこで私達の見たものは……


▼PT順1番目のキャラ

シタン
「あれは……?▽

シタン
「ここが、
 その場所だと……▽

バルト
「あれは……?▽

バルト
「ここが、
 その場所だってえのか……▽

リコ
「あれは……?▽

リコ
「ここが、
 その場所なのか……▽

ビリー
「あれは……?▽

ビリー
「ここが、
 その場所だと……▽

マリア
「あれは……?▽

マリア
「ここが、
 その場所だと……▽

エメラダ
「あれは……?▽

エメラダ
「ここが、
 その場所……▽

チュチュ
「あれは何でチュか?▽

チュチュ
「ここが、
 その場所でチュね……▽


待ってくれ!


お前が来ることが
出来るのはここまでだ。

ここから先は俺の世界。
入ってくることは出来ない。


どういうことだ?


お前がより下位の、
俺に従属する模擬人格だからさ。


下位の模擬人格だって?


そう。……あの時、
あいつは俺の記憶の一部を……

俺の存在意義である欲動<イド>
そのものを封印した。

俺があいつに
封印されたことによって、
初期化された基礎人格。

その上に、その後の
経験によって新たに
構築された人格……

それが今のお前なんだ。


あいつ!?
それはもしかして親父との
ことを言っているのか?


あいつを親父と
呼ぶのか? お前は?

何もしてくれなかった、
あいつの事を。

あいつが、
不甲斐ない所為で……

あいつが俺を護ることが
出来さえすれば……

そうすれば……
母は死なずに済んだ……。


母さんは俺が生まれてすぐに
死んだんじゃなかったのか!?

一体母さんの身に何が起きたんだ!?
教えてくれ! イド!


お前が知る必要はないんだ。
どうせじきお前は消滅する。

お前の基礎人格である
“あの臆病者”といっしょにな。

俺は存在の力によって
俺自身を支配する。


??


お前が知らないのも無理はない。
あれは、俺自身のりんねの記憶に
刻まれたものだからな。

模擬人格であるお前は、記憶を
管理する意識上<ステージ>には
上がれない。


夢や幻覚の記憶のことなら
知っている。俺は何度も
そういったものを見てきた!


それは、意図的に俺がお前に
見せていたものさ。

封印を解く為、
お前自身の存在としての力を
弱めるように選んでな。

お前の精神的エネルギーが弱まれば
俺は自由に活動出来たんだ。


何!?


もっとも、中には俺が見せたもの
以外のものもあったがな……

ん!?

どうやら誰か来たらしい。
多分、お前の仲間だ。
俺を追って来たんだろう。


どこへ行く!?


俺は存在と再び
接触する為にここに来た。

太古より続く記憶の
糸をつなぎ合わせ、全てを
断ち切る存在となる……

それが接触者としての運命。
準備は整った。
真の覚醒の時だ。

手始めに偽善だらけの
あいつらを消滅させる。


待て!
待ってくれ! イド!


お前はそこで
見物していろ。


▼PT順1番目のキャラ

シタン
「こ、これは……▽

シタン
「……▽

シタン
「フェイ!?
 で、ではこれはヴェルトールの
 変化した姿だと言うのですか?▽

バルト
「な、何だ、こりゃあ!?▽

バルト
「……▽

バルト
「フェイ!?
 じゃあまさかこれは……
 ヴェルトール!?▽

リコ
「な、何だ、これは!?▽

リコ
「……▽

リコ
「フェイ!?
 じゃあ、これはまさか、
 ヴェルトール!?▽

ビリー
「こ、これは!?▽

ビリー
「……▽

ビリー
「フェイ!?
 じゃあ、これはまさか、
 ヴェルトール!?▽

マリア
「こ、これは……▽

マリア
「……▽

マリア
「フェイ!?
 ま、まさか、これは……
 ヴェルトール?▽

エメラダ
「これは……▽

エメラダ
「……▽

エメラダ
「フェイ?
 じゃあ、これ……
 ヴェルトール?▽

チュチュ
「!?▽

チュチュ
「……▽

チュチュ
「フェイ!?
 じゃあこのごっチュいのは、
 ヴェルトールしゃん?▽


ワイズマン
「無事か?▽


▼PT順1番目のキャラ(台詞共通)

シタン
「ワイズマン!?▽


ワイズマン
「最早こうなっては手遅れだ!
 力を貸せ!
 イドを……消滅させる!▽


▼PT順1番目のキャラ(台詞共通)

シタン
「!?▽


ワイズマン
「ゾハルはデウスの中枢。▽
 スレイブジェネレーターや
 エーテルなど……
 全てのエネルギーの源。▽
 その力を得、覚醒したイドは
 この世界を消滅させる気だっ!▽
 ゾハルとの接触は、
 本来のフェイの人格に
 統合されてからでなくては
 ならなかったのだ!!▽

ワイズマン
「むっ!?
 離れろっ!▽

イド
「ふん。また貴様か。
 いちいち邪魔をする。▽
 だが、貴様に俺を止めることは
 出来ん。自らの妻も、息子も、
 守れなかった貴様にはな!▽
 息子に会わせる顔がないから
 そんな面を被っていたのだろう?
 カーン!▽


▼PT順1番目のキャラ(台詞共通)

シタン
「息子!?▽


ワイズマン
「……▽

イド
「そうだ。その男こそ
 フェイの……いや、俺の父親、
 ウォン・カーンだ!!▽

カーン
「……フェイはどうした!
 イド!▽

イド
「残念だったな。
 貴様によって生み出された
 新しい人格のフェイ……▽
 それによって、俺達を完全な
 一個の人格とすべく度々導いていた
 ようだが、それも徒労に終わる。▽
 あいつはもうじき
 俺にのみ込まれる。▽

カーン
「そうはさせん!
 その前にお前を消滅させる!

イド
「ふぬけの貴様に出来るものかっ!
 貴様がふがいない所為で母は死に!
 奴は思い出の中に逃げ込んだ!▽
 俺は全ての嫌なものを
 背負わされ存在し続けた!
 それが貴様に解るか!▽

カーン
「私はただ導いていた
 わけではないっ!▽
 私やお前の感じた想い、悲しみ、
 憎しみ……そういったものを
 経験しても、フェイは
 自らを築きあげようとしていた。▽
 今のフェイにならば、
 お前の想いが理解できるはずだ。
 その理解者を、フェイをも
 消滅させ、お前は何を望むっ!▽

イド
「今更何を尋く!!
 俺の目的は“奴”と同じ
 滅尽滅相! ただひとつ!!▽

カーン
「それ程憎いかこの世界が……
 お前の中には憎しみしか
 存在しないというのか!▽

イド
「それを創り出したのは
 貴様とあの女だっ!!
 白々しいぞっ!!▽

カーン
「……くっ
 ……聴こえるか?
 フェイ!▽
 私が打ち込む想いの拳、
 受け取めてくれっ!
 そして一つとなれっ!▽


▼PT順1番目のキャラ

シタン
「フェイ!!
 本当の貴方はどこに
 行ったんです!▽
 思い出して!
 エリィを救い出すんじゃ
 なかったんですか!?▽

バルト
「フェイ!!
 このまま終っちまって
 いいのか!?▽
 思い出せよ!
 あいつを、エリィを
 助けるんだろ!?▽

リコ
「フェイ!
 お前、いつまで
 寝ぼけてるつもりだ!?▽
 思い出せ!
 あいつを、エリィを
 助けるんじゃねぇのか!?▽

ビリー
「フェイ!!
 君は今まで何のために
 戦って来たんだ!▽
 思い出して!
 彼女を、エリィを
 助けるんでしょう!?▽

マリア
「フェイ!
 しっかりして下さい!▽
 思い出して!
 エリィが、あなたを
 今、必要としているんです!▽

エメラダ
「フェイ!
 エリィが待ってる!▽
 思い出して!
 エリィが、
 ずっと、ずっと、待ってる!▽

チュチュ
「フェイ!
 目を覚ますでチュ!!▽
 忘れちゃダメっチュ!
 愛しゅる人を、エリィを
 助けるでチュ!!▽


そうか……
ここはイドの中。

憎しみと悲しみに
満ちた世界。

在るのはそれだけ……。
そうだよな……
わかるよ、イド

お前が何故
世界を憎むか……

お前には何も
なかったんだな……。

何も……
楽しい思い出はみんな……

なのに……
……なんて心地いいんだ……

気持ちいい……

そうだ……
抵抗することなんてない。

もともと俺はイドを
覆い隠すためだけの存在。

ならその場所に
還った方が……

一緒にいよう……

全てを消し去って……
俺達も……


▼PT順1番目のキャラ

思い出して!
エリィを救い出すんじゃ
なかったんですか!?

思い出せよ!
あいつを、エリィを
助けるんだろ!?

思い出せ!
あいつを、エリィを
助けるんじゃねぇのか!?

思い出して!
彼女を、エリィを
助けるんでしょう!?

思い出して!
エリィが、あなたを
今、必要としているんです!

思い出して!
エリィが、
ずっと、ずっと、待ってる!

忘れちゃダメっチュ!
愛しゅる人を、エリィを
助けるでチュ!!


エリィ?
エリィ……
……そうだ!

俺は、エリィを!


ここは……?


……余計な事を。
自分のためだけに
呼び込んだか……。

ここは基礎人格の殻の内部、
“臆病者”の部屋さ。
お前も何度か来ているはずだ。


そうか……
覚えがあるぞ。
たしかここには夢の中で……


そいつが嫌なもの、望まぬもの
すべてを俺に押しつけて、
自分の殻に閉じこもった
“臆病者”『フェイ』。

俺達の
基となった人格だ。


君は誰?
……そうか。君は僕の……

ねぇ、君も一緒に観ようよ。
僕の大切な、宝物なんだ……


ふん、そうやって何度も何度も
幸せに満ちあふれた時を再生し、
その中で生きているんだ。
そいつは。

そしてこの俺が生きることが
出来るのは、その残りカスの
中だけさ。

お前にも見せてやるよ……
俺の“全て”を。


ごく普通の家庭だった。

厳格だが、
頼りがいのある父。

優しく全てを
包んでくれる母。

それまでの日々は、
幸せだった。

だがある日……

突然、母が変った。

全くの、
別人のようになった。

その日から、
『フェイ』の
居場所はなくなった。

父は、
よく家を留守にした。

何か大事な、
仕事はあるようだった。

『フェイ』は父の留守の度に、
不可思議な機械が設置された
場所に連れて行かれた。

そこには、
奇妙な格好をした
奴等がいた。

そして『フェイ』の身体に
計測器具のようなものを
つけ、何かの実験を始めた。

実験は、
苦痛をともなった。

助けて、母さん!

何をするのっ!?

いやだっ!

いやだよぉっ!

母は、
助けてはくれなかった。

幼い『フェイ』には
抗う術は無かった。

だが、“それには”
耐えることが出来たんだ。

やがて実験は、
“耐えられない”ものへと
変わっていった。

『フェイ』の前に
何人もの人が集められた。

そいつらは、アニマの器との
同調率の高い者達だった。

それは『フェイ』を覚醒させる
ための、精神接合だった。

だが、『フェイ』との接合に
抗しきれる者は一人として
いなかった。

『フェイ』の意志とは
関係なく引き出された力は、
そいつらを破壊していった。


信じられるものか!
母さんがそんなことを……

精神接合だって?
俺を覚醒させることに
なんの意味がある?


神の目覚めの為には、
何一つとして欠けることは
ゆるされなかった……。

過去分かたれたものは、
完璧にならなくては
いけないからな……。


フェイの前で何人もの人間が
死んでいった。

男、女、老人、
少女、亜人もいたか……

苦しみ、悲痛、恐怖、こう惚……
様々な表情と言葉を遺して……

それらはもろく、バラバラと、
壊れた人形のように、
『フェイ』の周囲に
転がっていた……

その光景は、
地獄だった。

母は父の前では
普段と変わりなく振る舞った。

『フェイ』が母の奇行と
自分の体験を話しても、
仕事に追われる父は
聞く耳を持たなかった。

幼子の空想としか、
思わなかった。

だが、それも
しばらくの辛抱だった。

『フェイ』は、
その精神的苦痛から
逃れるために、ある方法を
無意識に思いついたんだ。

辛いもの、嫌なものを
担当する人格を形成、
元の人格から解離させた。

あいつは自分を
かやの外においた。

俺は、その発生当初から、
全ての嫌なものを
押し付けられる役割だった。

俺は解離した時から
憎しみに支配されていた。

憎しみは破壊衝動へと
自然と変化した。

俺は全てを壊したかった。

母も、父も、
世界も……

やがて父は母の行動が
おかしいことに気がついたが、
すでに遅かった。

俺は、元の俺自身、
その臆病者と
完全に解離していた。

人形達は壊れ……
そして……、

『フェイ』の心も
壊れた……。


なぜ母さんがそんな……?


俺に内在する力の存在を知った
母は、その真相を究明すべく、
実験をくり返したんだ。

そう、あの女は……
母は、ミァンだったんだよ。


嘘だっ!


嘘じゃないさ。

母は、ミァンだったんだよ。


カーン
「……そうだ。
 カレンはミァンと
 なっていた。▽


▼PT順1番目のキャラ

シタン
「何ですって!?▽

バルト
「何だって!?▽

リコ
「な、何ぃ!?▽

ビリー
「何だって!?▽

マリア
「何ですって!?▽

エメラダ
「!?▽

チュチュ
「何でチュって!?▽


カーン
「別に不思議なことではない。
 ミァンの補体は一人では
 ないのだ。▽
 ミァンの因子はほぼ全ての
 女性の遺伝子内に封印されて
 いる。誰もがミァンとなる
 可能性を持っていた。▽

イド
「それがたまたま母だっただけさ。
 もっともエリィだけは
 “特別”だがな!!▽

カーン
「ぬぅおっ!▽

カーン
「フェイの記憶の時間軸が
 二重三重になっている事に気付いた
 カレン<ミァン>は確信した。▽
 フェイが
 “接触者”なのだと!▽


▼PT順1番目のキャラ(台詞共通)

シタン
「接触者!?▽


……そう、俺は接触者だった。
その為にあの男が呼ばれ……、

そしてあの時がやってきた……


やめて!
もうやめて!

父さん!
父さん!!

母さん!
父さんを助けて!

ねぇ母さん!
何故助けてくれないの?

父さんが、
父さんが死んじゃうよぉ!


グラーフは、
俺に内在する力を
求めてやってきた。

自らの肉体に
戻るためにな。

もうわかっているだろう?
グラーフは、ラカン。

500年前に分かれた
俺達の半身、残留思念だ。

グラーフとなり、この地上を
破壊しつくしたラカンは、
人の精神に宿る術を身に付けた。

恐らくは“存在”との
接触によって身に付いた
ものだろう。

肉体は滅んだが、ラカンの精神は
人の肉体に憑依することによって
生き長らえた。

そして再び転生した
自分自身の肉体に、
魂に戻る為現れたんだ。

父は……
あいつは闘った。

だが、あいつは俺も、
母も護ることが
できなかった。

情けなく血ヘドを
吐きながら闘って
いたのにな。

父がグラーフになぶられ、
助けを求めた母は助けて
くれない。

その場の状況に耐えきれなく
なった“そいつ”は……


グラーフ
『ぬぉ!』

グラーフ
『ぬぅおぉー!!』


自らの感情にまかせ、
力を暴走させ、
そしてその結果……

……母が死んだ。


母さん!


そして、“そいつ”は
その結果すら
この俺に押しつけた。

母を殺した責任から
逃れるため、俺を
表に立たせた。

“俺は、母をも殺したんだ。”


そいつは、いやなものすべてを
俺に押し付け、そして母の愛、
幸福に満ちた思い出だけ
独り占めにした。

そしてそれら思い出と共に
永遠に自分の殻の中に
閉じこもったんだ。
その場所がここさ。

俺達の目の前にあるこの
光景は、そいつが作り出した
ものだ。思い出にしがみついて
いるだけだ。


これが……

やめろ!
もうやめてくれっ!
これが、こんな光景が
俺達の全てなのか?

あんまりだっ!
ここには何もない!
こんな偽りと
苦痛だらけの世界が……


仕方ないさ。
これが俺達の
世界<すべて>なんだから……。


カーン
「私が愚かだった。
 全ては私の責任だ。▽
 シェバトからの責務に忙殺され、
 カレンの変化に気付かなかった。
 助けを求めていたお前を
 救うことが出来なかった。▽

イド
「救うだと!?
 今さら何を!
 もはや何も変えられはしない。▽
 貴様に出来ることは、
 この俺によって
 葬り去られることだけだっ!▽

カーン
「ぐぅおぉーーーっ!!
 そ……それでも、私は……
 お前を、救ってみせる。▽


親父っ!!

止めろっ! イド!
親父には何の罪もない!


知ってるよ。
本当に悪いのはこいつだ。

母も父も
キッカケに過ぎない。


ありがとう。
それ、返して。
母さんと遊ぶんだ。


こんなものは……
現実じゃない!!

嘘だ!

偽りだ!

まやかしだ!!

みんな、
みんな、
みんな……


いやだっ!
出てって!

ここは僕の部屋なんだっ!

君なら僕と一緒にいつまでも
居てくれると思ったのに!


何故現実を見ようと
しないんだ!

楽しかったことも、
辛かったことも、それは
全部合わせて一つのものじゃないか!

何故見せてやらないっ!?
君がいつも見ているものを
イドにも!


いやだっ!
あれは僕のものだっ!

母さんを殺したやつなんかに
見せるのはいやだっ!


よくいうぜ。
殺したのは
お前じゃないか?


違うっ! 僕は殺してないっ!
母さんを殺したのはお前だっ!
僕は母さんを
殺してなんかないっ!

母さんが振り向いて
くれなかったから、
父さんが気付いて
くれなかったから、
だからお前は母さんを……

だから僕は
殺してなんかないっ!
殺してなんかないっ!
殺して……


いいかげんにするんだっ!!

……母さんを殺してしまったのは
“俺達”だよ。誰のせいでもない。

母さんがミァンになった
からでも、父さんが気付いて
くれなかったからでもない。

原因を外に求めてはだめだよ。
責任を自分以外に押しつけちゃだめだ。

たしかに母さんはミァンだったかも
知れない。君が体験した日々が
辛かったこともわかる。
誰だって耐えられないよ。

だけど、だからって
それをイド一人に
押しつけてはだめだ!

俺達はみんなで一人なんだ。
俺達は一つにならなきゃ
いけないんだ。
そうだろう? フェイ……。

さあ、自分の足で歩くんだ。
見たくない現実に
目を向けるんだ。

イドに見せてあげるんだ。
君が独り占めにして
しまったものを……


グラーフ
『ぬぉ!』

グラーフ
『ぬぅおぉー!』

幼フェイ
『っ!?』

カレン
『ぅあ゛あぁぁーー!!』


嘘だっ! あの女が!
この光景は、そいつが
創り出した幻想だっ!

俺は、俺の存在意義は、
こんなだましを見せられたって
揺らがないぞっ!

俺は……!
俺は……!


イド……もうやめよう。
俺達がこんなことをしていたって
何の解決もないんだ。

母さんは最後に
俺達を救ってくれた。
それは事実だ。そうだろう?

辛い現実ばかりじゃ
ないんだよ、イド……。


俺の……
俺の力は誰も救えなかった。
ただ、破壊するだけだった。

人との一体感は、それを
壊すことによってしか
得られないと思っていた。

だから全てを
壊すしかなかった……。

人も、世界も……
エリィも……。


でも、そうじゃない。

ミァンであった母さんが
俺達を救ってくれたのと
同じに救えるんだよ。
俺達の力は……

人を、そして
……エリィを。


……初めてだよ。
母親とはこんなにもあたたかな
ものだったなんて……

俺には……
あたたかすぎる……。

フェイ。
俺の持っている記憶を渡そう。

そうして知るんだ。
今までの生き様を。
俺達が何者なのかを。
そして何を成すべきかを。

まだ俺達の本当の統合は
済んでいないんだ。


エレハイム!!

アベル……
生きて……


……その子を……
わたすわけには……
……い…か……な…い……よ、ね……

……生き……て…


ソフィア
「ラカン! 生きて!


この世界に神がいないのなら、
       俺がこの手で創ってやる!


ラカン
「……どこだ、ここは……?
 ……ここは処刑場なのか?

ラカン
「……何故逃げる?
 俺達は仲間じゃなかったのか?

ラカン
「……誰だ?
 こいつは?

ラカン
「これは……
 俺が生み出したものなのか?
 どうなってしまったんだ俺は……

俺は……一体……何者なんだ……?


……生きて!


ラカン
「……生きてやる……

ラカン
「たとえ地獄に堕ちようとも、
 この世の滅ぶその劫まで
 俺は……生きてやる。
 それでも尚、世に滅びが
 訪れないのであれば……
 俺がこの手で
 滅ぼしてくれよう!



    

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